大判例

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東京地方裁判所 平成12年(ワ)2258号 判決

①事件

原告

大中物産株式会社

右代表者代表取締役

下川文雄

右訴訟代理人弁護士

根岸隆

被告

インターエナジー株式会社

右代表者代表取締役

田部井康浩

右訴訟代理人弁護士

飯塚義次

主文

一  被告は、原告に対し、金一三二万一七〇九円及びこれに対する平成一二年一月一九日から支払済みまで年六分の割合による金員(ただし、金三三二万円を限度とする)を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  この判決は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

主文と同旨

第二  事案の概要

本件は、原告が、訴外オカザキ物産株式会社(以下「訴外会社」という。)所有の建物についての根抵当権の物上代位権に基づき、訴外会社が被告に対して有する賃料債務の差押命令を得たとして、被告に対し、その支払いを求めているのに対し、被告は、訴外会社に対して債権を有していたところ、右債権と訴外会社に対する賃料債務とを将来に向かって相殺することを予約していたのであるから、原告による差押債権は既に相殺によって消滅しているとしてこれを争っている事案である。

一  前提となる事実(証拠の記載のない事実については当事者間に争いがない。)

1  原告は、平成一〇年六月九日、訴外会社が所有する別紙差押債権目録記載の建物(以下「本件建物」という。)についての別紙担保権・被担保債権・請求債権目録1記載の根抵当権の物上代位権に基づき、訴外会社が被告に対して有する本件建物の平成一〇年六月分以降の賃料債権について差押命令(以下「本件差押命令」という。)を得た。

本件押差命令は、平成一〇年六月一一日、被告に送達されたが、右命令における押差債権額は、金三六四九万五六六八円であった。

2  被告は、本件差押命令における第三債務者の陳述書において、本件建物の賃料として月額金二〇万円の債務があることは認めたが、その支払を拒否している。

3  原告が本件建物について有する根抵当権は、最も遅いものでも昭和五七年一一月一〇日受付で設定登記がなされており、本件建物については、平成一〇年五月二〇日競売開始決定がなされた(なお、右開始決定における請求債権は、本件差押命令における請求債権と同一である。)。

右競売事件は、平成一一年、一一月一八日に競落人による代金納付がなされ、平成一二年一月一八日に配当手続が行われた。

(以上、甲三ないし五、弁論の全趣旨)

4  右配当手続における原告の請求額と配当額は、次のとおりであった(甲六)。

A 原告の請求債権元本 金二九二三万三三二九円

右は、原告が競売申立て後の弁済により減縮した金額である。

B 右の損害金 金三二二万九二八一円

右は、平成一〇年三月一八日から平成一二年一月一八日までの年六分の割合による損害金である。

C 配当額金三一一四万〇九〇一円

5  被告と訴外会社間において、

(一) 訴外会社が被告に対し、訴外会社所有の本件建物を中心とする給油施設を、『平成一〇年三月一日から平成二五年三月一日まで、月額賃料金二〇万円、翌月分を毎月末日限り支払う約定で賃貸する』旨の、平成一〇年三月一日付「給油施設賃貸借契約書」(乙一、以下「本件賃貸借契約書」という。)及び

(二) 訴訟会社が被告に対して、『借入金債務残元金七三四〇万円及び未払商品代金一億四九六三万六七三八円の合計金二億二三〇三万六七三八円の債務を負担していることを承認し、他方、被告が訴外会社に対して、右給油施設の賃貸借契約による平成一〇年四月一日からの月額金二〇万円の賃料債務を負担していることを承認し、両者間において、右両債権を平成一〇年三月から将来に向かって相殺することを予約する、この場合毎月末日限り互いに何らの予告を要せず双方の債務は直ちに相殺されるものとする』旨の、平成一〇年三月一日付「債務承認並びに相殺予約契約書」(乙二、以下「本件相殺予約契約書」という。)

が存在する。

二  当事者の主張の要旨

【原告】

1 原告は、本件建物についての根抵当権による競売手続きによって、金三一一四万〇九〇一円の配当を得たが、これを前記一、4のB及びAの順に法定充当すると、訴外会社に対して、なお金一三二万一七〇九円の請求残元本を有することになる。

2 したがって、原告は、訴外会社に対し、右金一三二万一七〇九円及びこれに対する配当の日の翌日である平成一二年一月一九日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の請求権を有するところ、これは本件差押命令の請求債権に含まれている。

ところで、訴外会社の被告に対する賃料債権は、原告により差押済みであるが、その差押えの効力は、平成一〇年六月一日に生じ、競落代金の納付がなされた平成一一年一一月一八日まで存続した。この間に差押えにかかる賃料債権額は、金三三二万円となる。

3 よって、原告は、被告に対し、差押済みの本件建物の賃料債権のうち、金三三二万円の限度内において、金一三二万一七〇九円及びこれに対する配当の日の翌日である平成一二年一月一九日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

【被告】

1 被告は、平成一〇年三月一日、訴外会社との間において、本件賃貸借契約書及び本件相殺予約契約書記載のとおりの各契約を締結した。

2 したがって、被告の訴外会社に対する賃料債務は、右相殺予約契約による相殺により消滅している。

三  争点

抵当建物の賃料債権についてなされた相殺予約に基づく相殺と抵当権による物上代位に基づく差押えとの優劣

第三  当裁判所の判断

一  前記前提となる事実5に記載のとおり、被告の主張に副うような本件相殺予約契約書(乙二)が存在するものの、他方、証拠(甲二)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、本件差押命令に対する第三債務者の陳述としては、差し押さえられた賃料等を債権者に支払わない理由として、差押債権者に優先する質権を有している旨主張していたことが認められ、かかる事実に照らし、果たして、被告と訴外会社間において真実被告が主張するような相殺予約契約が締結されたのか疑問の余地も存する。

しかし、仮に、被告が主張するように、被告と訴外会社間において、相殺予約契約が締結されたとしても、①抵当権者は、物上代位に基づく抵当建物の賃料債権の差押えによって、右賃料債権にも抵当権の効力を及ぼしうるとするのが確立された判例理論であること、②したがって、抵当権の効力が物上代位の目的となる抵当建物の賃料債権にも及ぶことは抵当権設定登記により第三者にも公示されていること、③それにもかかわらず、被告主張のような相殺予約契約による相殺が物上代位に優先することになれば、抵当権者の犠牲において、担保権者でもない債権者が、担保権者に遅れて相殺予約をすることにより、事実上優先弁済を受けることを容認する結果となり、両当事者間の衡平の見地からもこれを是認することができないことから、本件において、相殺予約契約による相殺が物上代位に優先するという被告の主張は採用できない。

二  そうすると、原告による訴外会社の被告に対する賃料債権の差押えは、被告主張の相殺予約契約による相殺に優先するものと認められるから、原告は、被告に対し、本件差押命令が送達された後の平成一〇年七月分から競売代金の納付がなされた平成一一年一一月一八日までの一六か月と一八日分の賃料合計金三三二万円の範囲内で、訴外会社に対する請求残元金一三二万一七〇九円とこれに対する配当の日の翌日である平成一二年一月一九日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求めることができるというべきである。

三  結論

以上の結果、原告の被告に対する請求は理由があるからこれを容認することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官村岡寛)

別紙差押債権目録、担保権・被担保債権・請求債権目録<省略>

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